MASATO KAIZAWA & SAKI KITAZUME / HER
「アートの視点で考えるファッション」をコンセプトに
アナログな手法を用いてプリントやテキスタイルを介して
独自の世界観を表現し続けるHER。
その繊細なコンセプト、プロダクツの裏側をデザイナー海澤氏、北爪氏に伺った。
ー初めにブランド活動はお二人でされているそうですが、なぜ今の活動形態を選ばれたのでしょうか。
また今に至るまでの経緯などお聞かせください。
海澤 : それぞれ専門の分野があり、足りない部分を補いながら制作しています。
私がグラフィックと服飾デザインを担当し、北爪が服飾デザインとパターンを担当しています。
HERを立ち上げた当初は既製品のカットソーにプリントし展開しておりましたが、2012 S/Sから北爪が加わり現在のHERの形になりました。
ー海澤さんの以前グラフィック・デザイナーをされていたそうですが、
なぜ新たな表現方法としてファッションを選ばれたのでしょうか。
キッカケや意識の変化などあったのであればお聞かせください。
海澤 : キッカケはグラフィックデザインの延長でTシャツのデザインを始めたことでした。
当時は既製品にプリントし展開していましたが、服作りという観点からクリエーションを突き詰めるにつれて、グラフィックから洋服そのものに制作の対象が変化しました。
その頃からグラフィックを中心に考えるのではなく、洋服の中に溶け込むようなデザインを意識しています。
ー北爪さんは前身もファッション業界に勤められていたそうですが、
独立は昔から決めていたことなのでしょうか。
海澤さんと同じく、キッカケや意識の変化などあったのであればお聞かせください。
北爪 : 具体的に独立を考えていたわけではなく、ただ漠然と作りたい!という想いがありました。
海澤と知り合って、HERの制作に関わって行くうちに少しずつ気持ちが変化していきました。
ーやはりお二人とも昔からファッションやクリエーションは身近にあったのでしょうか。
海澤 : 昔から物を作る事は好きでしたが、特にファッションという訳ではありませんでした
北爪 : 母が裁縫好きだったのもあって、子供の頃に使っていたものは手作りの物が多かったです。
その影響で学生時代は自分でも作ってみたり、リメイクしたりしていました。
ーでは特定の何かに影響を受けたということはあるのでしょうか。
海澤 : 小さい頃は特に影響を受けた物はないのですが、絵ばかり描いていました。
デザインの勉強をするようになってからは、 デヴィッド・リンチ の映画に強く影響されていたと思います。
今でも大切なイメージソースの1つです。
ファッションを意識するようになったのは学生時代にTシャツのデザインを始めた頃からです。
北爪 : 服の販売をしていたことがあるのですが、その時の店長が元デザイナーだったのでその影響があると思います。
服の構造や、生地の作り方などいろいろと教わっていくうちに、もっと学びたいという気持ちが芽生えてファッションの道に進みました。
ー続いてHERのプロダクツについて伺っていきたいと思います。
ウィメンズを制作されていますが、初めから決めていたことなのでしょうか。
海澤 : 特に決めていた訳ではないのですが自然とウィメンズを選んでいました。
ーそれはなぜでしょうか。
海澤 : 自分で着たい服ではなく着てもらいたい服を作りたいといった思いがあったからかもしれません。
ーではコンセプト、” 架空の「彼女」のための洋服 ” についてですが、
毎シーズンごとにどんな人に着て欲しいなど、あらかじめ決めて制作したりはするのでしょうか。
海澤 : シーズン毎の方向性やデザインに関して言えば、一人の女性をミューズ(注:モデル)として制作しています。
ブランドコンセプトの中にある「架空の彼女」についてはもっと抽象的なイメージです。
近所の公園のベンチでたまに見かける彼女であったり、幼い頃の住んでいた家の、斜め向かいの家の彼女かもしれません。
ー同じくコンセプトから ” 日常を特別なものに変えること〜 ” についてですが、
HERの考える ” 特別 ” とはどのようなものなのでしょうか。
海澤 : お気に入りの洋服を着る事で、気分が高揚したり、いつもと違う自分になったような感覚は誰もが経験したことがあると思います。
その特別な感覚をHERの洋服を着る事で体感していただければ幸いです。
ー制作についてアナログにこだわられている理由についてお聞かせください。
アナログだからこそ伝えられることとはなんなのでしょうか。
また今後もアナログな手法にこだわっていかれるつもりなのでしょうか。
海澤 : 最初から最後までパソコンの中だけで制作した作品には薄っぺらさを感じます。
自分の手の感覚で描いたものでしか伝えられないこともあると信じています。
ただそれだけに縛られ、クリエーションの幅を狭めてしまうようなことはしたくないですね。
ーでは、どのようにお二人の意見を制作にまとめているのでしょうか。
またどう役割を分担して制作されているのでしょうか。
海澤 : 最初にシーズンテーマを決めるところから、洋服の細部に至までお互いに納得のいくまで話し合います。
テキスタイルに関してはパーソナルな部分が強いので、私の世界観で進める事が多いですね。
ー制作、そしてブランド活動において一番意識している姿勢とはなんでしょうか。
海澤 : 制作において、洋服という枠から外れないように意識しています。
ーそれはなぜでしょうか。
海澤 : コンセプトに引っ張られすぎていたり奇を衒ったような過剰なデザインは、あまり美しいとは思えません。
どんなにコンセプチュアルな服であったとしても、着た時に美しくなければ意味がないと思うのです。
着る人を美しく見せることが洋服の在るべき姿だと思います。
ー活動の中でショップ(And A)とコラボレーションされていますが、
その目的や理由はなんでしょうか。
海澤 : And Aとコラボレーションすることで得られる化学反応のようなものを期待しました。
実際にAnd Aのデザイナーさんに洋服の形をデザインしていただいたのですが、HERでは選ばないような素材感や形が新鮮で、とてもいい商品を作ることが出来ました。
ー今後もコラボレーションはされていかれるのでしょうか。
海澤 : And Aのような大手セレクトショップとのコラボーレションは、新しい客層へのアプローチにもなりますし今後も機会があれば続けて行きたいと思っています。
HERでは展開していないアイテム、コートやバックなど挑戦できれば面白いと思います。
ー私どもINVITATIONSはデザイナーと消費者のデザイナーと一般消費者の距離を縮めることを目標にしています。その中で消費者からHERはどのようなイメージでありたいですか。
海澤 : 常に新鮮なイメージでありたいと思います。
ーでは最後に、今後のHERの展望や実現したいことなどについてお聞かせください。
海澤 : まずは多くの方々にHERを知ってもらうこと。
そして、ファッションを楽しんでいる人たちから支持されるようなブランドになりたいと思います。
http://invitations.jp
(Interview : Tatsuya Tanaka / Text : Tatsuya Tanaka)
profile : 海澤 雅人 / MASATO KAIZAWA
グラフィックデザインを学んだのちレディースのアパレルメーカーに入社、カットソーの企画に携わる。
同社を退社後、2009 年に「HER CREATION」を設立、自身のブランド「HER」を立ち上げる。
プリント、テキスタイル、デザイン全般を担当。
profile : 北爪 沙紀 / SAKI KITAZUME
服飾デザイン・パターンを学んだのちレディースのアパレルメーカーに企画として入社。
同社を退社 後、2012 S/Sよりデザイナーとして参加。デザイン、パターンを担当。
HER
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